熱中症指数(WBGT)とは|区分の見方・運動指針・予防を数値例つきで解説
公開日:2026年8月6日 更新日:2026年8月30日 運営:シルギア(アナライズギア株式会社) 対象ツール:熱中症指数(WBGT)・危険度
同じ気温でも、湿度が高い日は熱中症で搬送される人が急に増えます。これは、汗が蒸発しにくくなって体から熱が逃げなくなるためです。この「気温だけでは分からない暑さの危険度」を数値にしたのが暑さ指数(WBGT・湿球黒球温度)です。このページでは、WBGTの意味、危険度区分の境界、運動や屋内外の目安、予防の要点を、実際に計算した数値例つきで解説します。あわせて、気温と湿度からWBGTを簡易推定できる当サイトの無料ツールの使い方も紹介します。
WBGT(暑さ指数)が気温と違う理由
私たちの体は、汗が蒸発するときに熱を奪う「気化熱」で体温を下げています。ところが湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、この放熱がうまく働きません。だから、気温が同じ28℃でも、乾いた日と蒸し暑い日では体への負担がまったく違います。
WBGTは、気温だけでなく湿度と、日射や地面からの輻射熱(放射熱)を組み合わせて求めます。正式には、湿度の影響を表す「湿球温度」に7割、輻射熱を表す「黒球温度」に2割、気温(乾球温度)に1割ほどの重みをつけて算出します。湿度の比重が最も大きいのが特徴で、これが「気温より湿度を重く見る」指標である理由です。単位は気温と同じ℃で表しますが、意味は気温とは別物である点に注意してください。
危険度区分の見方(25/28/31℃が境界)
WBGTの値は、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」に沿って5つの区分で読みます。境界となる数字(25・28・31℃)を覚えておくと判断が速くなります。
- 21℃未満:ほぼ安全。通常は熱中症の危険は小さい範囲です。
- 21〜25℃:注意。激しい運動や重労働では発生の可能性があります。
- 25〜28℃:警戒。運動の合間に定期的に休息と水分補給を。
- 28〜31℃:厳重警戒。外出はなるべく避け、激しい運動は中止が目安です。
- 31℃以上:危険。高齢者は安静時でも発症の危険があり、外出を避け運動は原則中止します。
境界はその区分に「入った瞬間から」対応が変わる目安です。28.0℃は厳重警戒、31.0℃は危険というように、少しの差で行動の基準が切り替わります。
数値例で確かめる(湿度で危険度が変わる)
このツールは、まず気温Tと湿度RHから水蒸気圧e(hPa)を求め、屋内向けの近似式「WBGT ≈ 0.567×T + 0.393×e + 3.94」で推定します。屋外(日射あり)を選ぶと、輻射熱の影響として簡易的に+1.5℃を加えます。実際に計算してみます。
- 気温30℃・湿度40%(屋内):eは約16.9hPa、推定WBGTは約27.6℃で「警戒」。
- 気温30℃・湿度70%(屋内):eは約29.6hPa、推定WBGTは約32.6℃で「危険」。
気温はどちらも30℃で同じなのに、湿度が40%から70%に上がっただけで、区分が「警戒」から一気に「危険」まで跳ね上がりました。湿度がいかに効くかがよく分かります。屋外の例では、気温28℃・湿度70%の屋内推定が約30.2℃、これに+1.5℃して約31.7℃となり「危険」区分です。低めの気温でも湿度と日射が重なると危険域に入ります。
運動と屋内外の目安
運動をするかどうかの判断にも、区分がそのまま使えます。目安は次のとおりです。
- 厳重警戒(28℃以上):激しい運動や暑さに弱い人の運動は中止。10〜20分ごとに休憩し、水分・塩分を補給します。
- 危険(31℃以上):運動は原則中止。とくに子ども・高齢者は行わないでください。
屋内でも油断はできません。冷房を控えた部屋は、体感では涼しくても湿度が高く、WBGTが「厳重警戒」に届くことがあります。実際、気温27℃・湿度80%の屋内は推定約30.4℃で厳重警戒相当です。就寝中や入浴後、キッチンなど、風の通らない場所ほど注意し、除湿や換気を早めに始めましょう。屋外の予定を立てるときは、時間帯ごとに気温と湿度を入れ替えて、危険度が高まる時間を先に把握しておくと計画的に動けます。
予防の基本(水分・塩分・休憩)
暑さ対策の柱は、環境を整えることと、体の内側を守ることです。次を意識してください。
- 水分:のどが渇く前に、こまめに少量ずつ。大量の汗をかいたときは水だけでなく塩分も。
- 塩分:経口補水液やスポーツドリンク、梅干し・塩あめなどで適度に補う。
- 休憩:涼しい場所で定期的に休む。無理に続けない。
- 環境:冷房・除湿・風通しで室内のWBGTを下げる。日中の外出時間をずらす。
- 見守り:暑さを感じにくい高齢者、体温調節が未熟な子どもは周囲が気を配る。
体調が悪いときは我慢しない(重要)
ここで示した区分や推定値は、あくまで目安です。実際の暑さ指数は日射・風・地面の照り返しで変わり、当ツールの簡易推定とはずれることがあります。外出や運動の可否を判断するときは、環境省「熱中症予防情報サイト」で公開されている地域ごとの公的な暑さ指数や熱中症警戒アラートを優先してください。本ツールは医学的助言ではありません。
そして最も大切なのは、数値より体のサインを優先することです。めまい・立ちくらみ・筋肉のけいれん・大量の発汗・頭痛・吐き気などは熱中症の初期症状です。感じたらすぐに涼しい場所へ移動し、体を冷やして水分・塩分をとってください。意識がはっきりしない、自分で水分が摂れない、症状が改善しないときは、ためらわず救急要請(119番)し、速やかに受診してください。命に関わることがあるため、「大げさかな」と迷ったら安全側に判断することをおすすめします。