粗利率・値入率の計算の使い方|似て非なる2つの利益率を正しく使い分ける
公開日:2026年8月3日 更新日:2026年8月30日 運営:シルギア(Analyzegear, Inc.) 対象ツール:粗利率・値入率の計算
商品やサービスの値付けで使う「利益率」には、実は分母の取り方が違う2つの率があります。売価を基準にする粗利率(対売価)と、原価を基準にする値入率(対原価)です。同じ商品でも数値がずれるため、どちらの話かを取り違えると値付けが狂い、ときには赤字にもなります。粗利率・値入率の計算は、原価・売価・利益率のうち手元にある2つを入れるだけで、残りの値と両方の率を並べて確認できるツールです。この記事では2つの率の違い、売価・原価・利益の相互計算、掛け率との関係、そして混同が赤字を招く具体例までを整理します。
粗利率と値入率はどこが違うのか
どちらも計算のもとになるのは利益額=売価−原価です。違うのは、その利益を何で割るか(分母)だけです。
- 粗利率(売上高利益率・margin)=利益額÷売価×100。売価を100としたとき利益が何%かを表します。会計や損益計算で使う「粗利益率」はこちらです。
- 値入率(マークアップ率・markup)=利益額÷原価×100。仕入れ値に何%上乗せしたかを表します。仕入れ側・値付け側の発想です。
分母が売価か原価かというだけの違いですが、売価は原価より大きいので、分母が大きい粗利率のほうが小さく出ます。つまり同じ商品なら必ず値入率>粗利率になります。「利益率30%」と言われたとき、それが対売価なのか対原価なのかで意味がまるで変わる、というのがこの2語をめぐる混乱の正体です。
数値例で確かめる
原価600円の商品を売価1000円で売ると、利益額は400円です。このとき粗利率は400÷1000=40%、値入率は400÷600=約66.7%になります。同じ400円の利益でも、売価基準では40%、原価基準では約67%と、26ポイント以上も数字が離れます。
別の例として原価700円・売価1000円なら、利益額は300円で、粗利率は300÷1000=30%、値入率は300÷700=約42.86%です。いずれもこのツールに数値を入れれば、内訳(原価・売価・利益額・粗利率・値入率)が同時に表示され、2つの率のギャップをその場で確認できます。まず「原価と売価」モードに手元の金額を入れて、今の値付けが何%なのかを見てみるのがおすすめです。
売価・原価・利益を相互に計算する
このツールには3つの計算モードがあり、手元にある値の組み合わせから残りを求められます。
- 原価と売価:利益額と粗利率・値入率を同時に算出します。今の値付けが何%の利益率かを確かめるモードです。
- 原価と粗利率:目標の粗利率から必要な売価を逆算します。式は売価=原価÷(1−粗利率÷100)。原価600円で粗利率40%なら、600÷(1−0.4)=600÷0.6=1000円です。
- 原価と値入率:仕入れ値に一定率を乗せて売価を出します。式は売価=原価×(1+値入率÷100)。原価600円に値入率66.7%を乗せると約1000円になります。
ここで注意したいのが、目標の粗利率を「原価にそのまま足す」やり方です。粗利率40%を取りたいのに原価600円へ単純に40%足して840円にすると、それは値入率40%であって、粗利率は(840−600)÷840=約28.6%にしかなりません。目標粗利率からの値付けは、必ず割り算の式(原価÷(1−粗利率÷100))を使ってください。「原価と粗利率」モードはこの計算を自動で行うので、足し算による取りこぼしを防げます。
掛け率との関係
小売や卸の現場では「掛け率」もよく使われます。掛け率=原価÷売価×100で、売価に対して仕入れ値が何割かを表します。いわゆる「7掛け(70%)」は、定価の70%で仕入れるという意味です。
掛け率と粗利率は表裏の関係で、粗利率=100−掛け率が成り立ちます。7掛け(掛け率70%)なら粗利率は30%、このとき値入率は30÷70×100=約42.86%です。掛け率で提示された仕入れ条件を、粗利率や値入率に置き換えて考えたいときも、「原価と売価」モードに原価と売価を入れれば一度に3つの数字がそろいます。掛け率・粗利率・値入率は、どれも同じ1つの商品を別の分母から見ているだけだ、と押さえておくと混乱しません。
混同すると赤字になる例
2つの率の取り違えは、値引き(セール)と組み合わさると赤字に直結します。たとえば「原価に30%乗せる」ルール(値入率30%)で、原価1000円の商品を1300円で売っているとします。利益額は300円ですが、粗利率は300÷1300=約23%しかありません。
ここで「利益率30%あるから3割引でもぎりぎり大丈夫」と考えて30%引きをすると、売価は1300×0.7=910円。原価1000円を下回り、1個あたり90円の赤字です。値入率(対原価)30%を粗利率(対売価)30%と勘違いしたことが原因で、実際の粗利率は約23%しかなかったため、30%の値引きには耐えられませんでした。値引き率は売価に対してかかるので、「割引に耐えられる上限」は原価基準の値入率ではなく粗利率で見るのが安全です。セール価格を決める前に、このツールで現在の粗利率を確かめておくと、こうした原価割れを避けられます。
使うときの注意
本ツールは税抜・単一商品の単純計算です。消費税、送料・決済手数料・人件費などの諸経費、廃棄ロスは含みません。税込で考えたいときは税抜金額に直してから入力してください。複数商品をまとめた全体の粗利率は、率を平均するのではなく、売価と原価をそれぞれ合計してから「利益合計÷売価合計×100」で求め直します(金額での加重平均になります)。
値付けや採算はお金に直結するテーマ(YMYL)です。ここで示す数値や式はあくまで目安・確認用であり、実際の価格戦略や税務の判断は、最新の公的情報や税理士・会計士などの専門家の助言を優先してください。まずはこのツールで2つの率を並べて確認し、その場で「どちらの基準の話か」をはっきりさせるところから始めてみてください。